性の悩み
といってもドイツ語のハナシ。ドイツ語には英語と違って名詞には具象・抽象に関係なくすべて文法上の性(男性、女性、中性)がある。
たとえば、ゲーテの有名な小説『若きウェルテルの悩み』のドイツ語タイトルは"Die Leiden des jungen Werthers"だが、「悩み」の"Leiden"も名詞なので当然、文法上の「性」がある。そして辞書を見るまでもなく、"Leiden"は「中性」名詞。したがって、(単数であれば)定冠詞は"das"のはずなのだが、なぜかこのタイトルでは"die"となっている。性転換したのか? いや、違う。この"Leiden"は複数なのだ。複数の定冠詞の一格と四格は女性名詞の場合と同じく、"die"であるため、この場合も"die Leiden"となっている(はず)。けっして女性名詞ではない。名詞そのものは単複同形であるため判別しにくいのだが…
ちなみに同小説の英訳タイトルは、"The Sorrows of Young Werther"または"The Sufferings of Young Werther"であり、さすがに、ちゃんと複数になっている。
さて、これによって、若きウェルテルの悩みが1つではないらしいこともわかるというわけ。