Das Notizbuch von ka2ka ― ka2kaの雑記帳

「クラスノダール」または「ネトレプコ考」の一環として

クラスノダールとはWiki日本語版の記事によると以下の通り。
クラスノダール(ロシア語: Краснода́р Krasnodar)はロシア連邦南部の都市。北コーカサス西部に位置するクラスノダール地方の行政の中心。クバン川に臨み、伝統的にクバーニ地方の中心でもあった。人口は653,300人(2004年)。モスクワから南に約1,540km、黒海沿岸の港湾都市ノヴォロシースクからは北東へ80km入った内陸にある。
と言われてもあまりピンとこないのは、単に勉強不足に他ならないが、先日のニューズウィーク日本版の記事を読むまで、まったく気にかけなかった(知らなかった)地名であることをここで白状しておく。また、それだけに尚更興味深い記事であり、アンナ・ネトレプコに対する見方が少なからず変化したことも事実である。つまり、ネトレプコが「ロシア人」であることは間違いないが、それに加えてというか、その前にクラスノダール出身のロシア人であるということを抜きにしての「ネトレプコ考」はありえないということ。その最も興味深いニューズウィークの記事の一部を以下、再掲。
 ゴージャスな美人が多いことで知られるロシアでも、クラスノダールは最高峰だ。アルメニア人、ユダヤ人、アディゲ人、ロマ人、スラブ人が殺戮と性交の果てにソフィア・ローレン似の女たちを生み出してきた。ネトレプコ並みの美人はざらだ。「クラスノダールでは私なんか見向きもされなかった。地元の男たちの好みじゃないから」
まあ、あまり品がいい文章とは言えないが、やや気にもなったので英語の原文を探してみたところ、この箇所は以下の通りであり、なぜか「訳漏れ(訳抜け)」とも思われる省略箇所(のイタリック箇所)も確認できる。
In a country famous for gorgeous women, Krasnodar is famous for having the very best. Here, Cossacks, Armenians, Jews, Adygeans, Gypsies, and Slavs have killed and copulated to produce a harvest of Sophia Loren look-alikes: Netrebko’s beauty is typical. “Nobody ever looked at me in Krasnodar. I’m not in the taste of the men there at all.” Southern men yearn for blonde Siberian waifs. “People were ignoring me. Here I become a real beauty.
ロシアに美人が多いことは周知の通りだが、その「最高峰」がクラスノダール産であることは知らなかった。それにしても「殺戮と性交の果てに」という表現は何ともではあるが、妙に的を射た感がしなくもない。そのクラスノダール産のネトレプコが地元(南部)では見向きもされなかった(無視された)のは、南部の男達がブロンドのシベリア人妻に憧れているから、そしてネトレプコが自分を美人と意識したのは、逆に「栗色の髪」の地中海人種の女性に憧れるドイツ語圏にやってきて(ちやほやされるようになって)から、というのが省略された原文の文末の意味だろう。これに続く箇所を原文とともに再掲。
 クラスノダールはロシアが辛うじて黒海に接する場所に位置する。つまり憧れの地中海への入り口で、これもドイツ人がネトレプコを崇拝する一因になっている。ゲーテの『イタリア紀行』以来、ドイツ語圏の人々は栗色の髪の女が住むイタリアに恋い焦がれてきた。ネトレプコはイタリア人の代わり、それもドイツ語圏で暮らしてくれるイタリア人なのだ。
Krasnodar is the place where Russia stands on tiptoe to touch the Mediterranean, it’s Russia’s inner Italy. This partly explains the adoration the Teutons have for Netrebko. Ever since Goethe’s Italian Journey, German-speaking civilization has pined for Italy, that brunette land beyond the Alps. Netrebko is Germany’s and Austria’s ersatz Italian, one who has agreed to dwell among them. (One could hardly imagine a Pavarotti moving to Düsseldorf.)
多少の誇張と偏見は否めないものの、なるほど、ドイツやオーストリアなどドイツ語圏で絶大な人気を博しているのにはこうした背景もある点に今までまったく気づかなかった。つまりドイツ人(Teutons)がなぜロシア人のネトレプコにこれほど夢中なのかと思ったら、「ロシア人」ではなく「イタリア人」だったというオチ。わかりやすいけれど、果たして人気の秘密はそれだけだろうか。
by ka2ka55 | 2012-01-03 02:44 |