Das Notizbuch von ka2ka ― ka2kaの雑記帳

ニーチェとマーラー

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これはもう16年前(1995年)に購入した『ニーチェ事典』(弘文堂)。初版を定価(¥13,000)で購入したものだが、今調べてみると発行元では品切れ(絶版?)状態、尼損では「中古品」が¥19,800から2冊、コレクター商品としても2冊出品されているが、なんと¥29,500と¥63,000(!)。売るつもりはないが、こりゃ定価でも売れるかもしれない。
それはともかく、同事典のマーラーの項目(pp.603-604)を前の記事との関連で引用しておく。
 世紀末ウィーンを代表する音楽家の一人であったマーラーは,1896年に発表した「交響曲第3番」の第4楽章でニーチェの『ツァラトゥストラ』の「酔歌」の章の「私は眠った,私は眠った―,/深い夢から私は目ざめた。―/世界は深い,/昼が考えたより深い」という有名な詩句を歌詞に用いている。カール・ショースキーは『世紀末ウィーン』の中でこの詩句を引きながら,マーラーによるニーチェの引用が同時代のウィーンの画家クリムトの「哲学」という絵を想い起こさせるといっている。両者に共通してうかがえるのは,世紀末ウィーンの精神状況の中に浸透していたニーチェ崇拝の影である。それは,後のウィーン表現主義へと結実する世紀末ウィーンの新たな芸術・文化運動の核にあった契機である。マーラーやクリムトが出入りしていたサークルにはウィーンの代表的なニーチェ主義者であったブルク劇場監督のブルクハルトがいたし,マーラー自身当初は自分の「交響曲第3番」を「悦ばしき智恵」と名づけようとしていたくらいであった。世紀末芸術とニーチェ熱の関連という問題圏に,マーラーの音楽もまた位置づけられうる。

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クリムトの「哲学

by ka2ka55 | 2011-05-07 21:47 |