Das Notizbuch von ka2ka ― ka2kaの雑記帳

『直子の微笑み』

先日記事にした『鮮やかな影とコウモリ』と同じ作者(アクセル・ブラウンズ)と翻訳者(浅井晶子)の『ノック人とツルの森』(河出書房新社)というタイトルの小説が今年の8月に出版されている。残念ながら(?)こちらは「中古」でもまだ高いため入手していないが、あらすじを読むとちょっと面白そうではある。というか、タイトルからでは内容がまったく推測できない。
つまり問題はタイトル。「鮮やかな影…」にしても「ノック人…」にしても(わたしが鈍いせいもあるかもしれないが)まったく意味不明。そこでそれぞれの原語(ドイツ語)のタイトルを見ると、"Buntschatten und Fledermäuse"と"Kraniche und Klopfer"となっている。なるほど。個々の単語の意味や語順に多少の問題があるにしてもほぼ直訳されていることがわかる。それにしても「ノック人」の意味は原語の"Klopfer"を見るまでまったく想像できなかった。ちなみに「ノック人」はやはり「のっくじん」と読むらしい。

一方、『直子の微笑み』と題された小説がある。と言っても、これは逆に日本語で書かれた小説のドイツ語訳のタイトル(Naokos Lächeln)を日本語に訳したもの。いささか紛らわしいが、原題は『ノルウェイの森』。原作は言わずと知れたHaruki Murakami。このドイツ語訳のタイトルを初めて見たとき、思わず仰けぞった。そして総じて日本人には悪評なのだが、ちょっと待てよとも思う。いろんな意味で、これはけっして悪くはないと最近思うようになった。だいいち、翻訳に際して原作者はドイツ語訳のタイトルを承諾している筈だ。というか、『ノルウェイの森』という原題自体、案外いい加減に付けられた経緯もあるらしい。ちなみにこの小説、映画化されるとのこと(クランクインは2009年、公開予定は2010年)。
by ka2ka55 | 2008-11-05 02:22 | 翻訳