本日はウィーン流に
例えば、ウィーン宮廷歌劇場音楽監督マーラー氏が自宅を出て10分も歩けば、コンツェルトハウスや楽友協会の前だ。クリムトらが拠点にする分離派館は向こうに見える。そこから仕事場のオペラハウスまで、早足ならば5分もかかるまい。リンク通りの国立オペラ座から旧城壁内の真ん中にあるベルクの実家までだって、グチャグチャした市内を15分。城壁はなくなっても、世紀末文化人のシーズン中の日常活動圏は、錦糸町から両国橋の向こう、遠くても秋葉原くらいまで。21世紀初頭の東京圏に暮らす我々とすれば、大都市ウィーンの空間的広がりはご町内レベル、せいぜいが小さめな区か市ひとつぶんもなかったのである。コンサートの曲目は、アルバン・ベルクのヴァイオリン協奏曲(Dem Andenken eines Engels、ヴァイオリン:イザベル・ファウスト(使用楽器:ストラディヴァリウス「スリーピング・ビューティ」(1704年製))やマーラーの第10番などウィーンで活躍した作曲家の作品。そして指揮がウィーン出身のアルミンクというわけで、奇しくもウィーンがテーマの一日であった。
ところで、ウィーンの主な劇場やコンサートホールの空間的位置関係は、プログラムに記載されていた上の文(執筆:渡辺和)に書かれている通りでほとんど徒歩圏内(フォルクスオーパーはいくらか離れている)。それと比べて東京の場合、あちこちに分散してしまっている感が否めない。45階から一望できる都心は狭い感じもするが、実際にはそうでもなく、都庁前から錦糸町まで地下鉄で30分以上もかかり、ウィーンなら市庁舎のある町の中心から郊外へ行く感じだ。もっともウィーンと東京を比較してもあまり意味がないかもしれない(ちなみにウィーンも東京と同じく23区)。というか、いろんな意味で比較にならないと思った。