ソレとコレは別―びわ湖ホール問題に寄せて
人件費も含めた維持管理費が年間約10億円かかるというが、その程度ならどうにかならないものかと思ってしまうが…そうもいかないのかね。
滋賀県といえば、新幹線の駅を作る作らないで「もったいない」を合言葉に選挙で「作らない」派の現知事が当選したことで話題になったが、今回の問題の背景にはその件が尾を引いているようにもみえる。そもそも「もったいない」を言い出したら、オペラなど「もったいない」の最たるものだろう。いま初台で上演中の《アイーダ》など大いなる無駄によって成立していると言っても過言ではない。本物の馬が2頭、舞台を駆け抜けるが、そのシーンはほんの数秒に過ぎず、そのために馬専用の楽屋も必要になるわけだから馬鹿馬鹿しいと思う人がいても不思議ではない。しかしこれらを「もったいない」と言って木馬か何かで間に合わせしまったらどうだろうか。
要するに、オペラに限らず、芸術文化には無駄がつきものであって、間違いなく「もったいない」思想の対極にあるものだろう。せっかくの優れたホールを休館させるのは「もったいない」という意見もあろうが、それは本質的にズレている。
そういえば、去る16日には現首相が夫人とともに初台で《アイーダ》を観劇したことが報道された。重要な人事が決まらない大変な時に暢気にオペラ観劇などしている場合か…という声も聞こえたが、ソレとコレは別だろう。もっともキャンセルしたら「もったいない」と思ったかもしれないが。