Das Notizbuch von ka2ka ― ka2kaの雑記帳

RE:バレンボイムへのインタヴュー記事(2)

再び昨日の続き(元ネタ記事はココ):

インタヴュアーが「音楽における反ユダヤ主義者たち(Antisemiten in der Musik)」に関連して、先日たまたま赤坂で聴いた「ヨハネ受難曲 BWV245」に触れている箇所がある。詳細は不明だが、今年3月ベルリンで同曲をめぐって激論があったとのこと(関連記事)。その結果、プロテスタントの神学者による「宣告」もあり、ベルリン大聖堂での同曲の上演に際して、「反ユダヤ主義的」な一部のアリアの歌詞が変更される事態になったという(ちなみにバッハの受難曲は1988年までイスラエルでは上演が禁止されていたとのこと)。なるほど日本ではほとんど問題にされないが、先日の公演で字幕を見ながら「これはヤバイのでは?」と思う箇所が少なからず認められたのは確かである。それにしても……

バレンボイムは、この点に関して、(やはり好きではないのかもしれない)「受難曲」の問題には直接言及せず、一般論として他のいくつかの例を挙げている。たとえば、国立歌劇場(UDL)でアルバン・ベルクの《ルル》を上演したときには、(侮辱的だという)「黒人」(Neger)が用いられた台詞の変更を要求する手紙を受け取ったこと。それなら、ドビュッシーの佳品で《小さな黒人》(Le petit nègre)のタイトルは変更すべきなのか。あるいは、(カトリック教徒だった)エドワード・エルガーはオラトリオ《ゲロンティアスの夢》(The Dream of Gerontius)を作曲したが、アングリカン(英国国教会)の国ではテキストがあまりにカトリック的であるという理由で変更を要求されていたことなど(つまり19世紀に英国でカトリック教徒であることは、ユダヤ教徒であることよりもずっとましなわけではなかった)。これを今すべて「修正」しようとしても、できるものではなく、単に受け入れなければならない。もちろんドイツにおける反ユダヤ主義は、最後に歴史上比べようもない残酷な事態になったという点で特別な事件である。しかし、自分としてはそれに触れたいとは思わない。確かにワーグナーは、道徳的に見て、極端な反ユダヤ主義者だったが、ナチスが1942年に犯した罪の責任を彼に負わせることはできない。それは全く間違いだろうと。
by ka2ka55 | 2012-06-20 18:58 | ニュース