Das Notizbuch von ka2ka ― ka2kaの雑記帳

RE:《ファウスト》を初めて観る

ローエングリン》も好きなオペラの1つではあるが、今一番気に入っているオペラは?と聞かれたらグノーの《ファウスト》と答えるかもしれない。
それにしても、歴史的には日本で初めて上演されたオペラが《ファウスト》であることは以前(2012-05-12)に指摘した通りだが、日本初演以来、現在までどれほどの上演回数があるのだろうか。少なくともここ数年間に上演されたことはなかったはずだし、来年は開場15周年となる新国立劇場でもまだ上演されたことがない。理由は定かではないが、上演しない理由はあっても、上演できない理由はないように思えるのだが……。
ところで、日本で初めて上演されたオペラとしての《ファウスト》はどんなものだったのか。少なからず興味があったので、検索してみると、すぐにいくつか興味深いサイトがヒットした。
まず、「永井荷風とオペラ」と題したサイトの年表によると、1894年(明治27年)に以下のように記載されている。
11月24日、グノーのオペラ「ファウスト」第1幕を東京音楽学校奏楽堂で、エッケルト指揮、宮内省楽部の管弦楽、音楽学校生の合唱、イタリア大使館員ら外人の独唱により上演。これが日本初の歌劇上演とされている
http://www32.ocn.ne.jp/~tsuzu/operetta-kafu.html
また、「浅草オペラ」と題するサイトの記事を一部引用:
明治27年(1894)11月24日、東京上野の官立東京音楽学校で、日清戦争の傷病兵義捐金の慈善興行として、日本赤十字社が、日本初のオペラ公演を開催した。
グノー作曲「ファウスト」で、管弦楽を宮内省雅楽部、蔭の合唱は音楽学校生徒指揮音楽学校教授エッケルであつたが、肝腎の歌手は素人の外人で、ファウストをドイツ語、メフィストはイタリア語で蛮声を張り上げての奇妙キテレツのオペラであったようだ。然し聴衆は「旅順陥落」「大日本帝国万歳」で、狂ったように「万歳」を連呼、幹事が帽子を持つて聴衆の間を歩くと、帽子の中は、たちまち客からのお金で一杯になったという。
http://homepage1.nifty.com/zpe60314/eiga9.htm
さらに、これはW大の某プロジェクト関連のレポート(PDF)の一部だが、初演とその後の上演についても詳しく書かれている。
4:グノー《ファウスト》に関する記事
4.1 日本における《ファウスト》
次に、当時の記事の特徴を明らかにするために、グノー作曲《ファウスト》についての記事を例に挙げてみたい。原作はもちろんゲーテによるもので、ジュール・バルビエ&ミシェル・カレによって台本化され、1859 年にパリのテアトル・リリックで初演された。文字通り 19 世紀オペラの金字塔とも言える作品であり、一般にフランスオペラの上演が少ない日本においてさえも人気の高い作品である。
日本における《ファウスト》であるが、1894 年(明治 27)に音楽学校奏楽堂で赤十字基金募集の音楽会の際に、3 人のアマチュア外国人歌手によって第 1 幕が上演されたのが始まりである。編曲・指揮はエッケルト、管弦楽伴奏によるものであった。その後 1907 年(明治 40)の4月に楽苑会の第 2 回公演(東京牛込の高等演芸館にて)の「歌劇大会」で、この《ファウスト》第 1 幕「書斎の場」は日本人によって再演された。そのときは小林愛雄作・小松耕輔作曲《霊鐘》も一緒に上演されたが、それは坪内逍遥作・東儀鉄笛作曲による《常闇》が上演されてから 5 ヶ月後のことであった(注 16)。すなわちこの頃は日本人による創作オペラが盛んで、日本人による翻訳ものは大正元年にローシーがやって来るまでそれほど上演されていなかった。この《ファウスト》再演は小林愛雄の訳詞により、ファウストは永井建子が、メフィストフェレスは陸軍軍楽隊の春日嘉藤治が演じた。当時の記述によれば、この 2 人は出演予定者の急病による代役であり、後半の二重唱は歌なしのパントマイムで代用したという。管弦楽は山本銃三郎の指揮で陸軍軍楽隊が担当したというが(増井 46)、おそらく実験的な上演の域を出るものではなかったと思われる。ともかく、この作品がよく上演されるようになるのは、浅草オペラの時代に入ってからである。
http://www.waseda.jp/prj-enpaku/jp/project/pdfs/10_report_mori.pdf
どうやら「初演」はまったくマトモなものではなかったようだが、この「初演」を題材にして1つのストーリーが作れるような興味深さでもある。
そして、上に挙げた「年表」を参考にすると、グノーのオペラ《ファウスト》の全幕の上演は、1942年(昭和17年)の藤原歌劇団による歌舞伎座での公演が日本人キャストによる初演だったようである。
by ka2ka55 | 2012-06-06 13:35 | 音楽 | Comments(0)