先日見て来た渋谷の
絵画展は、フェルメールの《地理学者》が目玉であるため「フェルメール展」のように思われているが、実際にはフランクフルトの
シュテーデル美術館が所蔵する17世紀オランダ絵画とフランドル絵画からの「選りすぐられた」作品展である。これがもし「シュテーデル美術館」展であったら、もっと別の名画の数々が展示されたはずで、そのひとつとして、ボッティチェリ(Sandro Botticelli, 1445年3月1日? - 1510年5月17日)の《女性理想像(
Weibliches Idealbildnis)》(1480年頃作)を挙げないわけにはいかない。写真は
2007年8月末に同美術館を訪れた際に撮ったもの。
ボッティチェリといえば、フィレンツェのウフィツィ美術館にある『
プリマヴェーラ(春)』(1482年頃)や『
ヴィーナスの誕生』(1483年頃)(いずれも30年前に実物を鑑賞)が代表作として有名だが、これらの大作に描かれたヴィーナスとこれらより少し前(ほぼ同じ頃)に製作された『女性理想像』とは同一のモデルにインスパイアーされた作品との解釈もある。少なくとも『女性理想像』のモデルが
シモネッタ・ヴェスプッチ(
Simonetta Cattaneo Vespucci,1453年-1476年4月26日)であることは明らか(しかしどの作品もモデルの死後に完成していることも明らか)。いずれにしても、この「フィレンツェ一の美女」がわずか22歳の若さで(肺結核により)他界していることには触れないわけにはいかない。ボッティチェリには(やや微妙な名前の)シモネッタをモデルにした他の作品もあり、そのうちの一枚が日本にあることを最近知った。これが日本に存在する唯一のボッティチェリ作品(『
美しきシモネッタの肖像』)でもあるようだが、所蔵しているのは公共の美術館ではなく某商社(○紅)のコレクションのため残念ながらいつでも鑑賞できるわけではないらしい。もったいない。
ところで、今年はボッティチェリの没後501年、というか昨年(2010年)が没後500年だったわけだが、それを記念してシュテーデル美術館では一昨年の11月から昨年の2月まで大規模な「ボッティチェリ展」が開催されていたことも最近知った。動画はその紹介ビデオ。このあと同美術館は拡張工事に入る。
前の
記事で「海外(ほとんどドイツ語圏)の美術館では、どんな名画でも行列することなく、ゆっくりじっくり鑑賞できて」などと書いたが、さすがにこの「ボッティチェリ展」では珍しく大行列(Schlange)ができるほどの大盛況だったようだ。しかもこんな雪の降る中を。これまでいつ行ってもこんな光景は見たことがない。