Das Notizbuch von ka2ka ― ka2kaの雑記帳

逸楽郷

きょう(27日)の朝刊で目に留まったのは、マドリードのプラド美術館が「16世紀フランドルの巨匠ピーテル・ブリューゲル(父)の大作を新たに確認した」と発表した旨の記事(「聖マルティヌスのワイン」と題する縦148センチ、横270.5センチの大型のテンペラ画。1565~68年に制作されたとみられる)。「美術史に残る大発見となる可能性がある」とのこと。写真を見ると、素人目にも「ブリューゲルっぽい」ことは一目でわかるが、いまだにこんなことがあるのかとちょっと驚きである。
なお、現在個人が所有している同作品はプラド美術館が購入する見込みだが、ZEIT紙などの記事によると、市場価格としては少なくとも「2500万ユーロ(約28億円)」の価値があるとか。
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また、多作のルーベンスとは異なり「ブリューゲルの現存作品は晩年の10年余りのものに集中しており、世界でこれまで40点しか確認されていない」というのも意外。そのうちの多くはたしかウィーンのKHMが所蔵しているが、ミュンヘンの「アルテ・ピナコテーク」が所蔵しているのは2点のみでそのうちの1点が(ドイツ語では)"Schlaraffenland"(逸楽郷)と題された上の作品(1567年、樫材、52×78 cm)。
変な絵で妙に気になるところがブリューゲルらしいのだが、ハンス・ザックスの詩に拠ったとされる同作品について手元の資料には以下のように説明されている。
無為飽食の無可有郷は人間の夢の一つの典型として古代以来の歴史を持つものであるが、ブリューゲルの場合には、これも一つの《逆になった世界》の表現として解釈されるべきものであろう。中央食卓のある木のまわりに、兵士、農民、教師と思われる三人が正確に九十度の間隔をもって車軸のごとく配され、左上部の小屋には騎士が口を開けて、飛来する焼き鳥(現在では見えない)を待っている。右上方にはクリームの山、それへ穴をあけて喰い付く男が見える。ナイフをさした焼き豚、匙付きのゆで卵、屋根で焼けるパン菓子、この働くことの悪徳である世界では、食物の方から走って来てくれるのである。ブリューゲルはこの絵で一体何を諷しようとしたのであろうか。

by ka2ka55 | 2010-09-27 16:15 | ニュース