逸楽郷
なお、現在個人が所有している同作品はプラド美術館が購入する見込みだが、ZEIT紙などの記事によると、市場価格としては少なくとも「2500万ユーロ(約28億円)」の価値があるとか。
変な絵で妙に気になるところがブリューゲルらしいのだが、ハンス・ザックスの詩に拠ったとされる同作品について手元の資料には以下のように説明されている。
無為飽食の無可有郷は人間の夢の一つの典型として古代以来の歴史を持つものであるが、ブリューゲルの場合には、これも一つの《逆になった世界》の表現として解釈されるべきものであろう。中央食卓のある木のまわりに、兵士、農民、教師と思われる三人が正確に九十度の間隔をもって車軸のごとく配され、左上部の小屋には騎士が口を開けて、飛来する焼き鳥(現在では見えない)を待っている。右上方にはクリームの山、それへ穴をあけて喰い付く男が見える。ナイフをさした焼き豚、匙付きのゆで卵、屋根で焼けるパン菓子、この働くことの悪徳である世界では、食物の方から走って来てくれるのである。ブリューゲルはこの絵で一体何を諷しようとしたのであろうか。