天使とキューピッド(2)
さて、そもそも「キューピッド」とは何なのか。
キューピッドは、古代ギリシア時代の神々の一人で、性愛の神様エロスの英語名です。ギリシア名がエロスで、ローマ名はクピドまたはアモル。つまりキューピッド、エロス、クピド、アモルはみんな同じ神様を指しています。キューピッド=エロスというのはいささか意外に思えなくもないが、しかしこれは間違いない事実であって、このことを理解していれば、天使とキューピッドがまったく別物であることは自明ということになる。そこで同書(pp.166-167)では「天使」について以下のように説明されている。
この神様、一般的には愛と美の女神ヴィーナス(英語名。ギリシア名アフロディア、ローマ名ヴェヌス)の息子とされています。父親は軍神マルスといわれていますが異説もあります。
木村泰司著『名画の言い分』(集英社)p.162
天使は純粋な精神体で、天上においてはエーテル(天体の世界を構成する原質)で構成されていると考えられています。つまり、本来は肉体を持たず、姿や形やサイズが決まっているものでもありません。ただ、地上においては物質化して人間のように見えるといった考え方です。ここが画家が天使を表現する際に難しい点であり、実際、多くの画家たちが悩んできました。だからこそ天使は、時代により画家により、女性、少年、青年、および幼児のようにさまざまな姿で表現されてきました。ですが本来、性は存在せず、中性です。