Das Notizbuch von ka2ka ― ka2kaの雑記帳

天使とキューピッド(2)

同じくルーベンスの晩年の作品の1つに『愛の庭』(The Garden of Love)もしくは『愛の園』(1635年頃)と題された、いかにもルーベンスらしいおバカな作品がある。これはマドリッドのプラド美術館所蔵のため実物は見ていないが、同解説によると「フランドル地方で流行した上流社会の集いの場面を模して男女の、とりわけ夫婦間における愛の姿を神話的理想像を用いて表現したものである」とあり、この作品の中にも『花輪の聖母』と同様に(有翼の)ヌードの幼児(複数)が描かれている。一見して区別はつかないのだが、こちらの幼児たちがキューピッドであることは絵のテーマから明らかだろう。つまり「愛」をテーマにして「神話的理想像を用いて表現」されているからである。
さて、そもそも「キューピッド」とは何なのか。
 キューピッドは、古代ギリシア時代の神々の一人で、性愛の神様エロスの英語名です。ギリシア名がエロスで、ローマ名はクピドまたはアモル。つまりキューピッド、エロス、クピド、アモルはみんな同じ神様を指しています。
 この神様、一般的には愛と美の女神ヴィーナス(英語名。ギリシア名アフロディア、ローマ名ヴェヌス)の息子とされています。父親は軍神マルスといわれていますが異説もあります。
                                       木村泰司著『名画の言い分』(集英社)p.162
キューピッド=エロスというのはいささか意外に思えなくもないが、しかしこれは間違いない事実であって、このことを理解していれば、天使とキューピッドがまったく別物であることは自明ということになる。そこで同書(pp.166-167)では「天使」について以下のように説明されている。
 天使は純粋な精神体で、天上においてはエーテル(天体の世界を構成する原質)で構成されていると考えられています。つまり、本来は肉体を持たず、姿や形やサイズが決まっているものでもありません。ただ、地上においては物質化して人間のように見えるといった考え方です。ここが画家が天使を表現する際に難しい点であり、実際、多くの画家たちが悩んできました。だからこそ天使は、時代により画家により、女性、少年、青年、および幼児のようにさまざまな姿で表現されてきました。ですが本来、性は存在せず、中性です。

by ka2ka55 | 2010-09-24 23:44 | 美術