Emily Magee
なぜ次点となったか。それは、やはりあのラストシーンの薄っぺらな演出でズッコケてしまったからにほかならない。最後は「もーやめてくれ!」と心の中で叫んでいたほど。あのラストですべて台無しになってしまったということだが、いずれにしてもあのオペラ、時代錯誤というか、荒唐無稽というか、音楽的にはともかく、オハナシとしてはB級と言わざるをえない。あまり真剣に論じるほどではあるまい(まあ、これはほとんどのオペラに当てはまることではあるけれど)。
とはいえ、音楽的には、とくに主役級の3人の女声は申し分なく、圧倒的だったという点で満足した公演だったことは間違いない。なかでも皇后役のエミリー・マギー(Emily Magee)は期待通りにすばらしかった。「今が旬」の声も聞こえる米国出身のソプラノであるが、ホームページに掲載されている今年から来年にかけてのスケジュールを見ると、《シチリア島の夕べの祈り》(オランダ)におけるエレナ公女役や《西部の娘》(チューリッヒ)におけるミニー役のほか、《サロメ》(ベルリンフィル/ザルツブルク)や《カーチャ・カバノヴァー》(ウィーン)におけるそれぞれタイトルロールのロールデビューが控えている。しかも、来年は再び来日公演(ローエングリン/エルザ役)も予定されているから困っちゃう。