Das Notizbuch von ka2ka ― ka2kaの雑記帳

最強のオペラ?―エロスについて考えてみるの巻

このところすっかり《オテロ》づいている。アタシが言うのもなんだが、やっぱりこれは傑作と言わざるをえない。好きか嫌いかと聞かれれば、言うまでもなく、大好き。そして、とくに好きなのは、なぜか第一幕。というか、第一幕ですっかり参ってしまって先へ進めないほど。別の言い方をすれば、残りは蛇足と言わないまでも、第一幕だけでも十分に傑作であるということ。

―参考動画―

さて、その第一幕の中でも「全編のハイライト」とも言えるラストの第三場におけるオテロとデズデーモナによる「愛の二重唱」だが、某解説書には「チェロの官能的な響きに導かれて愛の二重唱「もう夜も更けて」(Già nella notte densa)が始まる。これほど静かでありながら情熱的、穏やかでありながら官能的な色彩をもった音楽をヴェルディはこれまで書いたことがない」と書かれている(p.216)。
「これまで書いたことがない」というのは、オペラとしては《オテロ》はヴェルディの最後から2番目の最晩年(74歳)の作品であって、しかも1つ前の作品《アイーダ》から16年も経過していることが念頭に置かれているのだが、著者(小畑恒夫)はヴェルディの音楽にエロスが現れたのは《アイーダ》からではないかとした上で、《アイーダ》で発見したエロスが濃厚に現れている場面としてこの二重唱に言及しているのだ―「エロス」と言われると、あたしゃ、ちょっと弱っちゃうのだけど、けっしてわからないでもない―たとえば、こんなふうに―「ラメダスとアイーダが現世を捨てて死の至福を希求したように、この二重唱でオテッロも死を望む。『死よ、来るがいい! この抱擁の恍惚のさなか、最高の瞬間に私をとらえるがいい!(Venga la morte! e mi colga nell'estasi / di quest'amplesso / il momento supremo! )』。オテッロにとって最高の幸せはいまここにある。彼は『最高の瞬間』を封印する死を望む。」(p.228)
と、まあ、ほとんど《トリスタンとイゾルデ》の世界と言えなくもないが、じっさいに、ヴェルディは大いにワーグナーの影響下に《オテロ》を作曲したようだ。
さらに蛇足を一つ加えると、この愛の二重唱がなぜこれほどに「エロス」を漂わせているのか、それなりの十分に納得できる理由があるにもかかわらず、同解説書を含めて他でもまったくと言っていいほど触れられていない。しかも、それはリブレット(台本)を見れば、ちゃんと書かれていることであって、当然、字幕でもけっして伏せられていない。しかし、なぜか誰も触れようとしないのだ。やっぱり、照れくさいのだろうか。でも、《オテロ》の観劇にあたって、とりわけ第一幕では重要な背景だと思うのだけど…調べた限りで、この点に言及されているのは、英文で書かれているこの本だけかもしれない。
by ka2ka55 | 2009-10-17 00:28 | 音楽 | Comments(0)